IPOや初値とは何か、リスクはあるのか、税金は掛かるのかなどIPOの初心者向け情報をまとめました。
●IPOとは
IPOとは、新規上場企業のことで、IPOの株式を購入し初値で売れば初心者でもローリスクで利益(キャピタルゲイン)を得ることができます。
※キャピタルゲインとは、株式を安く買い、高く売った際の売却差益のことです。
上場済みの株式売買(セカンダリーマーケットでの株式売買)で利益を得るには、多くの知識と経験が必要であり、投資家の心理を読む力も必要となるため、初心者には利益を取得することが難しくなっています。
しかし、IPO投資では、大まかに「株式を購入」し「初値で売る」、という2工程で初心者でも利益を取得することが可能となります。そのため、ローリスクなIPOの売買を投資目的とする投資家もいます。
●初値とは
初値とは、IPOで上場した企業が最初に付けた株価のことで、IPOを目的とした投資家はこの株価(初値)で売ることになります。
※この時の売り方は、成り行きの売りを選択します。
※初値が付いた後も株価の上昇を予想している場合は、必ず初値でIPOの株を売却しなければならない訳ではありません。
IPOの株を購入した価格よりも初値が上昇すれば、初値売りをした際に初値と購入価格の差額が利益として取得できます。
●初値売りによる利益ってどのくらい?
IPO投資では、ローリスクで利益が取得できると説明しましたが、実際にどの程度の利益とリスクがあるのか、気になるところだと思います。
そこで、2016年にIPOで上場した会社、83社の初値勝率・初値騰落率の統計を取りました。
※初値勝率は、購入価格から初値が上昇したかどうかです。
※初値騰落率は、購入価格から初値がどの程度上昇あるいは下落したかです。
・初値勝率は、80.7%(67/83社)です。
・初値騰落率は、71.7%です。
このうち、初値騰落率が100%以上(投資資金の2倍以上)になったものは、24社(28.9%)もあり、高確率とは言えませんが、投資資金が2倍以上になることを考えると十分良い確率と言えるかもしれません。
最大でどれほどの初値騰落率の上昇があったのか、ランキング形式で初値上昇率のトップ10を以下にまとめました。
企業名 | 上場市場 | 業種 | 吸収金額 | 初値騰落率(%) | 利益(円) | 主幹事 |
---|---|---|---|---|---|---|
グローバルウェイ | マザーズ | 情報・通信 | 5億円以下 | 373.0 | 1,104,000 | 大和証券 |
はてな | マザーズ | 情報・通信 | 5~10億円 | 278.1 | 222,500 | SMBC日興証券 |
エルテス | マザーズ | 情報・通信 | 5億円以下 | 263.7 | 472,000 | SBI証券 |
AWSホールディングス | マザーズ | 情報・通信 | 5億円以下 | 235.3 | 586,000 | SBI証券 |
セグエグループ | JQS | 情報・通信 | 5億円以下 | 223.5 | 380,000 | みずほ証券 |
ティビィシィ・スキヤツト | JQS | 情報・通信 | 5億円以下 | 221.4 | 310,000 | SMBCフレンド証券 |
イノベーション | マザーズ | 情報・通信 | 5~10億円 | 214.1 | 593,000 | SMBC日興証券 |
フィル・カンパニー | マザーズ | 建設 | 5億円以下 | 205.3 | 269,000 | SBI証券 |
シルバーエッグ・テクノロジー | マザーズ | 情報・通信 | 5~10億円 | 191.3 | 172,200 | 大和証券 |
ハイアス・アンド・カンパニー | マザーズ | サービス | 5~10億円 | 189.5 | 180000 | SMBC日興証券 |
初値上昇率のトップはグローバルウェイで373%、利益は驚愕の100万円超えです。その他の企業は10万円を超えています。
ランキングを見ると初値の上昇には傾向があるように見受けられます。
・上場市場は、マザーズが初値上昇しやすい。
・業種は、情報・通信業が初値上昇しやすい。
・吸収金額は、少ない方が初値上昇しやすい。
上記の中でも吸収金額は初値に及ぼす影響が非常に大きいです。
※IPOにおける吸収金額の影響のまとめはこちらです。
※IPOにおけるロックアップの影響のまとめはこちらです。
※IPOにおける成長力の影響のまとめはこちらです。
※IPOにおける業種人気の影響のまとめはこちらです。
※IPOの初値評価方法と予想に関してこちらです。
●IPO投資のローリスクの程度
ここまでは初心者でもできる、ローリスク、初値が大きく上昇するなど、うまい話しかでませんでしたが、投資を行う上でリスクを理解しなければなりません。
先ほどと同様にランキング形式で初値騰落率の下落のワースト10を以下にまとめました。
企業名 | 上場市場 | 業種 | 吸収金額 | 初値騰落率(%) | 損益(円) | 主幹事 |
---|---|---|---|---|---|---|
ユー・エム・シー・エレクトロニクス | 東証1部 | 電気機器 | 20億円超 | -17.3 | -52,000 | みずほ証券 |
アイドママーケティングコミュニケーション | マザーズ | 情報・通信 | 20億円超 | -14.6 | -21,000 | みずほ証券 |
ウイルプラスホールディングス | JQS | 小売 | 10~15億円 | -8.0 | -15,100 | みずほ証券 |
アカツキ | マザーズ | 情報・通信 | 20億円超 | -8.0 | -15,500 | 野村證券 |
フィット | マザーズ | 建設 | 20億円超 | -7.9 | -14,900 | SBI証券 |
船場 | 東証2部 | サービス | 20億円超 | -7.5 | -9,700 | 野村證券 |
シンシア | マザーズ | 精密機器 | 10~15億円 | -7.1 | -15,000 | SBI証券 |
アイモバイル | マザーズ | サービス | 20億円超 | -6.8 | -9,000 | SBI証券 |
ベイカレント・コンサルティング | マザーズ | サービス | 20億円超 | -6.5 | -13,700 | 野村證券 |
ソラスト | 東証1部 | サービス | 20億円超 | -6.0 | -7800 | SMBC日興証券 |
下落率のトップは、ユー・エム・シー・エレクトロニクスで-17.3%、-52,000円です。その他の企業は、-1万円~-2万円程度となっています。
ランキングの傾向としては、やはり吸収金額が顕著に出ています。ほとんどが20億円超えの大型のものとなります。上昇率ランキングの傾向とは異なり、上場市場や業種については、傾向が見えづらくなっています。
このように、IPO投資にはリスクが存在します。しかし、初値売りの利益に比較して、損益が極めて小さいことからIPO投資はローリスクの投資方法と言えるかもしれません。
当サイトでは、リスクをさらに抑えるため、IPOの評価及び分析、初値予想を行い、初値上昇が見込まれるIPOとそうではないIPOの判断材料となるよう情報を公開しています。
※2017年のIPOランキングはこちらです。
●税金のお話
IPO投資は、大きな利益が出ますが、その分税金も掛かります。ここでは、IPO投資における税金がどの程度掛かるのかをまとめました。
IPOに当選して初値売りをした際に、キャピタルゲイン、売却差益が生じます。株式の売買では、この売却差益に税金が掛かります。
税率は、20.315%(住民税及び復興特別所得税:15.315%、住民税:5%)です。
※売却による損失時には税金は掛かりません。
※税率20.315%の0.315%が復興特別所得税になり、2037年末まで課せられます。
IPO投資家は、一般口座でIPOの株を売却した際の年間の損益(1/1~12/31)を計算し、確定申告を行う必要があります。
しかし、IPO投資をした年に確定申告をしなくても良い方法がります。それは、口座開設時に「特定口座」の「源泉徴収有り」を選択することです。こうすることで、源泉徴収されるだけで納税ができ、確定申告が不要となります。
ただし、「特定口座」の「源泉徴収無し」を選択すると、証券会社が損益を計算した書類を添付して確定申告を行う必要があります。
また、IPO投資で利益が出た場合に、確定申告を行うと総所得(給与所得や株の売却利益等)が大きくなり、国民健康保険料の増加する可能性があります。
開設口座の種類は、確定申告の手間軽減や国民健康保険料を増加させないためにも、「特定口座」の「源泉徴収有り」を選択するのが良いかもしれません。
以上、IPOの初心者情報でした。