【IPO分析】ロックアップがIPOの初値に及ぼす影響

【分析情報】IPOのロックアップと初値騰落率の関係について

●ロックアップの概説

ロックアップとは、IPOの銘柄が上場する前の株主の保有する株式(以下、上場前保有株式と呼びます。)または、ストックオプションに対して、株式の売却制限を掛けるものです。ロックアップを掛けることで、上場時の株価の下落の抑制が期待できます。特にベンチャーキャピタル(VC)の上場前保有株式にロックアップが掛かることで、株価の下落を抑制する効果が高まると考えられます。
※ロックアップは、上場前の発行済み株式または、ストックオプションに掛けられるものであり、IPOで購入した株式に掛けられるものではありません。
※ストックオプションとは、社員等が購入している新株予約権のことです。
※ベンチャーキャピタルは、未上場企業の株式を保有し、上場時に売却する可能性が高い株主です。

ロックアップの期間には、90日間、180日間、270日間があり、上場からの売却制限の期間を表します。この期間は上場前保有株式の売却が制限されます。
しかし、ロックアップの期間が指定されていても、上場前保有株式を売却できる場合があります。それは、公募価格に対して上場後の株価が高くなればロックアップが解除されるというものです。ロックアップが解除される倍率は、公募価格に対して1.5倍あるいは2.0倍の株価になります。この1.5倍あるいは2.0倍以上になった場合に上場前保有株式の売却が可能となります。
ロックアップに関するこれらの情報は、目論見書等に明記してあります。

●IPOにおけるロックアップの影響

ロックアップは、IPOの銘柄が上場した際に初値上昇に影響を与えます。
下図は、2016年からのIPOのデータをまとめたもので、IPOの初値騰落率とロックアップの関係を表したものです。ロックアップのスコアが大きくなるのに従って、初値が上昇しやすくなっている傾向が若干ですが見受けられます。
※横軸のロックアップのスコアは、当サイト独自の評価方式により評価したものになります。

ロックアップの影響2017
ロックアップのスコアが4~5近傍では、若干初値騰落率が高く出ていますが、これは、吸収金額や公開株数の少ないもの等の影響が大きく出ているものと考えられます。
IPOの初値上昇には吸収金額の影響が大きいものの、それら極端に少ない吸収金額のIPOのプロットを除外することで、IPOのロックアップによる初値上昇の傾向が見えるものと考えられます。
但し、ロックアップのスコアが良ければ、必ずしも初値が騰がるわけではない、というところには注意が必要です。
IPOには、吸収金額とロックアップの他に、成長力や業種人気などのパラメータも影響してくるためです。
※IPOにおける吸収金額の影響のまとめはこちらです。
※IPOにおける成長力の影響のまとめはこちらです。
※IPOにおける業種人気の影響のまとめはこちらです。

●ロックアップがIPOの初値に与える影響の考察・まとめ

・IPOにおけるロックアップは、上場前保有株式に掛かるものであり、ベンチャーキャピタルなどの売り要素が強い株主に掛かることで売り圧力を抑制でき、需給のバランスを保つことができるため、ロックアップの効果が特に高いものと考えられます。

・IPOにおいてロックアップは、上場前保有株式にロックアップをかけることで、流通株式の1株あたりの持株比率(1株/流通株式)の低下を抑制でき、IPOの株式価値を維持する機能を持っていると考えられます。このことから、吸収金額ほどIPOの初値に影響を与えるファクターではありませんが、少なからずIPOの初値に与える影響力は有しているものと考えらえます。

・IPOにおいてロックアップの掛かりが悪いことは、デメリットばかりではありません。ベンチャーキャピタルの株式等が売却されれば、その分の株式が多くの投資家に渡ります。それによって株主数が増加し、株式売買が活発になります。マザーズ市場やJASDAQ市場から東証1部に出世するためには、株主数等の条件をクリアしなければならないため、株式売買が活発になることは望ましいものと言えます。そのため、ロックアップの掛かりが悪く、上場前保有株式の売却されることが必ずしもデメリットとは言えないものと考えられます。

ロックアップは、IPOの投資を行う上で良否の判断材料となるパラメータではありますが、ロックアップだけで全てのIPOを判断できるわけではありません。
そこで、当サイトでは、このロックアップというパラメータを初値上昇の要素の一つとして評価し、初値騰落率の予想を行っています。
※IPOの初値評価方法と予想に関してこちらです。